リスク・リターンの究極は「シナリオ思考」を鍛えることなのでは?

資産運用とは、リスクとリターンから投資するべきかどうかの意思決定プロセスを繰り返すことだといえます。では、リスク・リターンの究極は何かを考える必要があります。

リスクとリターンは計算することができますが、その結果に基づいて投資すれば必ず儲かるわけではないです。いわゆる、計算上のリスク・リターンが算出できるだけというわけです。

とはいえ、ここ数年の世界的な好成績ヘッジファンドは、クォンツと呼ばれる高等数学とコンピューターによりマーケット予測モデルを使ったリスク・リターンから稼いでいるのも事実です。

では、歴史的に稼いだファンドマネージャーは、どのような人だったのでしょうか?

1992年にジョージ・ソロスは、英国経済が悪化しているに反してポンドの価値が高止まりしていることに目をつけました(当時、英国は事実上の為替固定相場制となっていた)。

彼は、英国の経済力とポンドの価値に歪みがあり、ポンドを大量に売れば(空売り)英国の中央銀行であるイングランド銀行のポンド買いは続かなく、ポンドが下落するシナリオを描いたのでした。実際に、ジョージ・ソロスのシナリオはその実行により数千億円の大儲けをしました。

因みに、中央銀行が自国通貨の通貨安に誘導するのは、紙幣を刷って市場に流せば良いのですが、通貨高にするには自国通貨を市場から買い戻す必要があり、それには外国通貨が必要になるため限界があります。

また、2008年にジョン・ポールソンは、米国での低所得者向けの住宅ローン(サブプライムローン)のキャッシュフローを裏付けにした債券(証券化商品)が住宅価格が上昇し続けることのみによって高値で売買されていることに目をつけました(当時、格付機関も債券に高格付けを付していました)。

彼は、住宅価格が上昇し続ける前提と住宅価格が下落すれば低所得者に住宅ローンが返済できないリスクが十分に織り込まれておらず債券価格に歪みがあり、宅価格の下落発生により証券化された債券は暴落するシナリオを描いたのでした。

ご存知にように、住宅価格の下落により住宅ローンが焦げ付き金融危機が発生しました。彼は、その直前にCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)という、債券が下落するとその損害を保険のように補填するデリバティブ商品を利用して1兆円以上を儲けたのです。

ジョージ・ソロスの案件もジョン・ポールソンの案件も、リスク・リターンを計算して投資しようとしても実現しません。なぜならば、ポンドが下落した過去データはありませんし、米国の住宅価格が下落した歴史はないからです。

特に、ジョン・ポールソンは不動産投資についての知識はなかったといいます。シンプルに合理的にシナリオを描いたのでしょう。もちろん、シナリオを描いてそれを実行する力は凄いです。

僕が言いたいのは、定量的なリスク・リターン分析が良いとか悪いとかではなく、どんな手法であれリスク・リターンのシナリオ描く思考が必要なのではないかということです。

残念ながら僕にもあなたにも将来のマーケットがどうなるかも、稼ぐトレーダーやファンドマネージャーが誰なのかもわからないのです。

やはり、正しいファイナンシャル・リテラシーを身に付けた上で、自らシナリオを描いて、リスクを取ってリターンを稼げる投資家になるのが、シンプルで合理的な資産運用ではないでしょうか。