投資範囲を日本市場だけにするか、世界市場まで広げるかを悩む人は結構いて、世界市場というのが未知の領域で、(漠然と)怖いという感情を生むという人もいるそうです。

 

投資範囲は、投資家のリスク許容度に応じたリスク・リターンを基に策定するアセット・アロケーション(資産配分)にも大きく関係します。

 

そこで、投資理論のひとつである効率的フロンティアを軸に、リスク・リターンの視点で日本市場のみと世界市場への投資を比較してみたいと思います。

 

先に結論を述べると、『世界市場への投資が効率的』です。

 

恋率的フロンティアとは?

効率的フロンティアとは、

 

アセット・アロケーションを構成するときの金融商品の組み合わせやウェイト(保有比率)は無数に考えられますが、そのなかでも同じ期待リターンで最もリスクが低いポートフォリオ、または同じリスクでも最も期待リターンが高いポートフォリオを効率的ポートフォリオとなります。

 

そして、効率的ポートフォリオの点を結んだ曲線を効率的フロンティアと呼び、理論上は曲線状のポートフォリオを選ぶことが合理的なリスク・リターンになるといわれています。

 

日本国市場と世界市場のリスク・リターン

実際に、日本国市場と世界市場の効率的フロンティアを計算してみます。

 

効率的ポートフォリオには、『期待リターン、標準偏差、相関係数』が必要になりますが、年金積立金管理運用独立行政法人(以下、GPIF)の公表値を利用します。

 

ただし、マイナスリターンではポートフォリオへの組み込みがゼロになるのは自明なので、国内債券の期待リターンは、-1.0 ⇒ +0.1へ調整しています。

出典:年金積立金管理運用独立行政法人

 

さて、期待リターンと標準偏差と相関係数をまとめると下記のようになります。

国内債券だけが、他資産に対して逆相関(リスク低減)になっています。

 

続いて、アセット・アロケーション比率の枠です。

日本国内投資は『国内債券、国内株式』の組み合わせ、世界投資は『国内債券、国内株式、外国債券、外国株式』の組み合わせになります。

 

青い囲みの部分のアロケーションが最適化(効率的ポートフォリオ)するように決めにいくのですが、マニュアルでトライ・アンド・エラーを繰り返したら日が暮れますので、エクセルのソルバー機能を使います。

 

<パラメータ設定>

・目標は、『標準偏差の最小値化(リスクの最小化)』

・変化させるのは、『各資産の比率(最適化ポートフォリオ)』

・制約条件は、『目標期待リターン以上の期待リターン(リターンの最大化)、各資産の比率は0%以上、資産合計は100%』

 

後は、ひたすら計算すると、

という結果を得られます。

 

縦:期待リターン、横:標準偏差として、各ポートフォリオのプロットを結んで効率的フロンティアを描いたのが下記です。

 

同じ期待リターンであれば標準偏差(リスク)が小さいの常に世界投資となりますし、同じ標準偏差(リスク)ならば、期待リターンが高いのは世界投資とも言えますね。

 

効率的フロンティアだけをみると、世界投資をするのが合理的といえそうです。

 

ショートフォール確率(元本割れリスク)と10年後の運用資産(確率分布)

効率的フロンティアだけでは寂しいので、もう少しリスクと期待リターンの比較をしてみましょう。

 

投資家としては投資元本が毀損するリスクは避けたいところです。効率的フロンティア上のポートフォリオの元本割れリスクはどうなっているのでしょうか?

 

日本国内投資も世界投資もショートフォール確率は、期待リターンに対して40%前後で推移していることがわかります。(比較しやすいように、期待リターンを3%までにしています)

 

比較という意味では、世界投資のほうが若干低いです。

 

一方で、将来の期待リターン(運用資産)の分布がどうなるかも比較してみます。

 

初期投資額を100したとき、効率的フロンティア上のポートフォリオの10年後運用資産の確率分布を期待リターン別に計算した結果です。(比較しやすいように、期待リターンを3%までにしています)

 

期待リターンごとに、10%、25%、50%、75%、90%のパーセンタイル値をプロットしています。(パーセンタイル値とは、小さい順に並べたときの全体に対する位置です。)

 

小さい方から10%の位置が縦線の一番下、25%の位置がボックスの底辺、75%の位置がボックスの上辺、90%の位置が縦線の一番上となります。

 

ボックス内にある赤のひし形が50%の位置(中心値)です。

 

運用資産の中心値は、日本国内投資と世界投資では大きく変わらないですが、期待リターンに対するリスク(変動幅)は日本国内投資のほうが大きくなります。

 

ショートフォール確率と将来運用資産の確率分布からも世界投資に軍配があがりそうです。

 

効率的フロンティア = 最適化アセット・アロケーションとは限らない

効率的ポートフォリオと効率的フロンティアを軸に日本国内投資と世界投資の比較をしました。

 

日本国内投資よりも世界投資のほうが効率的な資産運用になるのと考えられる結果が得られましたが、いくつかの留意点もあります。

 

  • 効率的ポートフォリオもそこから導き出される効率的フロンティアも過去データなどの前提に依存している
    • 定量分析はどうしても計算前提が必要になります。今回は、GPIFの直近データを参考にしていますが、当然ですが、一般論としてデータ元が変われば結果も変わる可能性があります。ただ、個人的には日本国内投資と世界投資の数値上の結論が逆になるのは、データに問題があると思います。

 

  • 日本国内投資と世界投資で国内債券の保有となるが、現状の超低金利で投資するのは経済合理性に欠ける
    • アセット・アロケーション上で国内債券の保有比率が一定程度あるのは相関係数が効いているのですが、いくら計算上、最適化ポートフォリオと提示されても、超低金利の国内債券に投資するのは経済合理性に欠けます。今回、GPIFが期待リターンを-1.0%と推計しているところを、当方で+0.1%に変えていることもあります。

 

  • 国内債券、国内株式、外国債券、外国株式だけではなく資産種類を増やしたケースも必要
    • 内外債券と内外株式の4資産ではなく、国内REITを含めたり世界投資も先進国と新興国とわけるなど、資産クラスを増やすことも考えられます。資産クラスを増やすと余計に世界投資の魅力が増すとは想像されますが。。。

 

いろんな場所で言っていますが、定量分析で重要で価値が生まれるのは、投資家がその数値をどのように解釈してシナリオを考えるかだと思います。

 

極端なことをいえば、日本経済の上昇を見込む投資家であれば、効率的フロンティア上のポートフォリオではないものが、最適化ポートフォリオとなることもあるでしょう。

 

個人投資家も効率的ポートフォリオや効率的フロンティアをすべて信じる必要はまったくありませんが、無意味な手法ではないです。

 

上手に活用できれば資産運用の質向上にはつながるのではないでしょうか。

 

注意)シミュレーションを含めた計算結果は将来のリスク・リターンを保証するものではありませんし、計算ロジックの正確性も担保していませんのでご留意ください。尚、投資や資産運用の最終判断は自己責任でお願いいたしますします。