金融はリスク・リターンの世界です。

 

投資家が金融商品を保有するのは、『リスクを引き受ける代わりにリターンを期待している』からです。資本主義社会での基本です。

 

ただし、リスクに対するリターン、もしくはリターンに対するリスクの大きさや種類の許容度は投資家により異なります。

 

たとえば、

 

  • 期待リターン:5%、リスク(標準偏差):20%は無理でも、リスクが15%なら投資する
  • 期待リターン:5%、リスク(標準偏差):20%は無理でも、リターンが10%なら投資する
  • 不動産のような実物投資は無理でも、REIT(有価証券)ならリスク・リターン水準により投資する

 

などがあります。

 

では、投資家は引き受けるリスクの許容度をどのように決めているのでしょうか?

 

結論からいうと、万人に共通するリスク許容度の決め方は存在しない。投資家の置かれている状況や未来の描き方が違うからです。

 

投資家ごとにリスク許容度の決め方が異なるからこそ、金融商品の売買が成立し、流動性が生まれて、マーケットの健全性が向上するともいえます。

 

リスク許容度とは?

リスク許容度の定義は言い回しがいろいろありますが、わかりやすいのは下記だと思います。

 

リスクとは収益(リターン)の振れ幅のことですが、収益(リターン)がマイナスに振れてしまった場合、どれくらいまでならマイナスになっても受け入れることができるか、という度合いのことを「リスク許容度」といいます。
期待する収益(リターン)の最大値・最小値を並べると、大きなリスクをとれば、期待収益は高まりますが、その一方で損をする可能性もあります。一方、場合によっては期待以上に利益が出る可能性があることが分かります。

リスク許容度とは、「どれくらい投資元本がマイナスとなっても生活に影響がないか」「どれくらいまでなら投資元本がマイナスとなっても気持ち的/気分的)に耐えられるか」というものです。

(出典:みずほ証券

 

意味

投資に際して”どの程度リスクを引き受けられるか”ということ。

解説

リスク許容度は一人ひとりの事情によって異なりますが、「客観」と「主観」の両面から総合的に考えることが大切です。
客観的な要素は、収入や資産額、年齢、投資経験、今後のライフイベントの数などで、(ほかの条件が同じなら)収入や資産額は多い方が、年齢は若い方がリスク許容度は高いと考えられます。
一方、主観的な要素は性格的なもので、例えば株価が下がると心配で眠れないといった場合にはリスクを取りすぎないよう注意が必要です。

(出典:日本証券業協会

 

投資や資産運用におけるリスクは、期待リターンの乖離幅(プラスでもマイナスでもブレ幅)が本来の意味ですが、リスク許容度のリスクは下振れにどれだけ耐えれるかの度合いです。

 

当然ながら、客観(定量)と主観(定性)の両サイドから総合的に判断する必要があります。

 

たまに、リスク許容度と損切り水準を混同している人がいますが、潜在的リスク(リスク許容度)と顕在的リスク(損切り水準)の違いだと理解すればわかりやすいです。

 

リスク許容度は、まだ実現していないけれど潜在的に存在するリスクの許容度。損切り水準は、現実に発生している損失の許容度のイメージです。

 

リスク許容度の計算とは?

残念ながら、あなたのリスク許容度が計算式だけで一意的に決まることはありません。

 

ですが、リスク許容度を決めるのに必要なリスクが及ぼす数値計算を確認してから、リスク許容度を決めるのは合理的といえます。

 

期待リターンを一定、リスクだけ変動させたときに及ぼす影響

 

すべての計算は、対数正規分布もしくは正規分布に従う前提です。

 

たとえば、期待リターン(μ):3%、リスク(標準偏差(σ)):15%の金融商品があったとします(日本株の長期的な予想リスク・リターン)。

 

実線が、μ:3%、σ:15%の対数正規分布で、破線は、σを1%ずつ上下させたものです(上段:μ、下段:σ)。

μ(%) 3
σ(%) 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

 

 

期待リターンの最頻値(ピーク)は、両サイドで3%程度の乖離になるのですが、リスクを大きくするにつれて裾野の広がり(リスク)と厚みも連動していることが分布からわかります。

 

実際に、ショートフォール確率(元本割れリスク)とVaR(90%確率での予想最大損失額)はリスクが大きくなるにつれて拡大していきます。

 

 

期待リターンが一定のときに、リスク変動が及ぼす潜在的なリスク(ショートフォール確率、VaR)は期待リターンの最頻値の低下と比較して大きいことがわかります。

 

一方で、このリスク変動が長期的にはどのように影響を及ぼすでしょうか?

 

  • 期待リターン(μ):3%、リスク(標準偏差(σ)):10%
  • 期待リターン(μ):3%、リスク(標準偏差(σ)):20%

 

2つの金融商品に積立投資(月:5万円)した場合における、20年間のモンテカルロ・シミュレーションです。

 

参考:明治安田アセットマネジメント

 

10%リスクが違うと、長期(20年後)では期待リターン(評価額)が183万円減少(1,565 ⇒ 1,382)するのに対して、元本割れリスクは20%強上昇(16.0% ⇒ 36.6%)しています。

 

リスクの違いに対する期待リターン(評価額)と元本割れリスクを、どのように判断するのかは投資家によってさまざまだと思います。まさに、その部分がリスク許容度に関係するのです。

 

ここで2つの注意点があります。

 

  • 長期間の将来シミュレーションにおいて、金額や確率そのものについての厳密性を追求するるではなく、方向性や傾向を確認
  • リスクの差が期待リターン(評価額)と元本割れリスクに影響しているのはシミュレーション上であること

 

リスク許容度はどのように決めるのか?

リスク・リターンのシミュレーションをして数値をみても、どのようにリスク許容度を決めるのかは、なかなか難しい問題です。

 

ただ、難しい問題だからと決めなければ知らずに意図しないリスクを取っている可能性もあります。

 

あくまでも参考ですが、僕が大きく考慮しているのが次の3つ点です。正解ではないです。

 

  • 期待リターンを変化させないで、リスクが2倍になったときを確認
  • 運用期間における元本割れリスクの推移を確認
  • 運用期間におけるVaR(確率90%での予想最大損失)の推移を確認

 

上記の3つをシミュレーションした後に自分の考える将来シナリオも考慮して、置かれている状況から下振れリスクに耐えられるかで決めています。

 

おおよその目安ですが、10年を超える長期投資で5年程度で元本割れリスクが30%未満になるのであれば、過大なリスクを取る金融商品ではなく許容範囲かと考えています(最後は自己判断です)。

 

正解のないリスク許容度の決め方ですが、不正解に近い決め方はあります。

 

リスク許容度に見合う期待リターンとリスクを決めて、それに合致するような投資信託やETFの組み合わせる決め方です。

 

これはただの数字合わせであり、リスク・リターンの本質を見失う可能性が高いので気をつけましょう。各資産のリスクはどこにあり、それがリターンの源泉だと理解するのです。

 

リスク許容度は定期的に確認する

リスク許容度の確認は、定期的にポートフォリオ単位や保有金融商品毎に確認することをオススメしますが、プラスリターンが続いたりすると手つかずのままになりがちです。

 

ただ、年に1回程度でも確認すると現状把握できますし、リスク許容度に余裕があればもう少しリスクを取って期待リターンを上げられると判断できるかもしれません。

 

明治安田アセットマネジメント野村アセットマネジメントのツールが便利です。

 

リスク許容度を確認したら手順も作成

リスク許容度を決めても、リスク許容度に抵触するような状況になったときの手順を決めておかなければ、せっかくのリスク許容度も意味がありません。

 

仮にマーケットが混乱状態になれば、損切りだけでなくポートフォリオをリスク許容度の範囲に収めることが必要になります。

 

その場、その場で保有している金融商品を売却する判断をするはメンタル的に非常に難しい(多くの投資家は保有している金融商品の値はすぐに戻るとプラス思考になる)ので、平常時に手順を思考実験しておくとよいです。

 

また、リスク許容度の確認と手順は、行動(投資や資産運用)しながら調整すれば効率性が上がります。最初に決めた手順に固執しないようにします。

 

リスク許容度の決め方に絶対的な正解はありませんが、決めることでマーケットからの退場を余儀なくされる可能性は低くなるでしょう。

 

注意)シミュレーションを含めた計算結果は将来のリスク・リターンを保証するものではありませんし、計算ロジックの正確性も担保していませんのでご留意ください。尚、投資や資産運用の最終判断は自己責任でお願いいたしますします。