未来は不確かなのは間違いないです。

 

ただ、不確かだからこそ楽しいし、チャンスもある。それに、不確かであるからとネガティブなことを叫んでも前に進まないし、得るものもない。

 

だったら、いろいろなことにチャレンジしていこうぜっ!!

 

上記のような陽気な話(自己啓発系)はそこら中にあります(笑)。

 

自己啓発を否定しませんし、自己啓発系の書籍もたまに読みます。ですが、精神論だけでは不安を覚える人もいます。

 

投資や資産運用も同じで、経験や知識が豊富になっても運用資金が大きくなればなるほど、不確かな未来に対して不安が大きくなったりします。

 

話が少しそれましたが、不確かな未来に投資や資産運用する上で、精神論以外に役立つ手法のひとつがシミュレーション分析です。

 

ただ、シミュレーション分析といってもいくつもの手法が存在します。博士号を持つような人が高度な数学を基にしたモデルからエクセルで簡単に計算できるものまで幅広いです。

 

そのようなシミュレーション分析ですが、現実の投資判断において参考になるのでしょうか?それともならないのでしょうか?

 

僕の結論としては、

シミュレーション分析の解釈によっては参考になる。ただし、シミュレーションが目的になってはいけない

だと考えます。

 

シミュレーション分析の技術的な部分に言及する内容ではありません。シミュレーション分析はどんなものであり、どのように利用するかの個人的見解となります。

 

シミュレーションすると何がわかるのか?

『シミュレーション(simulation)』の定義を調べると、

  1. ある現象を模擬的に現出すること。現実に想定される条件を取り入れて、実際に近い状況をつくり出すこと。模擬実験。「市場の開発をシミュレーションする」「マーケティングシミュレーション」
  2. コンピューターなどを使用して模擬的に実験を行うこと。実験内容を数式模型によって組み立て、これをコンピューター処理することによって実際の場合と同じ結果を得ようとするもの。
  3. サッカーで、反則の一。相手チームの選手から反則を受けたかのような演技をして、審判を欺くこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

となっています。正直、シミュレーションの辞書的な意味をはじめて調べました。

 

3.は直接関係ないですが、1.と2.からコンピューターを使用した現実に想定される条件で模擬的な実験をして結果を得ることができると言えます。

 

シミュレーション分析によりリスク・リターンがわかる

投資や資産運用で根幹を成すのが、リスク・リターンです。リスクだけでもなく、リターンだけでもない思考が必要になります。

 

期待リターン(μ):5%、標準偏差(σ):10%とした仮の金融商品で、いくつかのシミュレーション分析おいて、リスク・リターンを確認してみます。尚、すべて対数正規分布に従う前提です。

 

実線は、μ:5%、σ:10%の分布です。破線は、μとσを1%ずつ上下させたものです(上段:μ、下段:σ)。

 

1% 2% 3% 4% 5% 6% 7% 8% 9% 10%
6% 7% 8% 9% 10% 11% 12% 13% 14% 15%

 

一番高い凸(オレンジ色)がμ:1%、σ:6%の分布となり、そこからμとσを+1%上昇させると、ピークが右に移動しながら低くなり、裾野も広がることがわかります

 

μとσの乖離幅は常に5%になりますが、μとσを上昇させると期待リターンのピークは下がり、リスクは大きくなりますが、プラスリターンの可能性が上昇するのがわかります。

 

感覚と合うでしょうか?もし、分布を確認するまでもなくμとσからイメージできれば金融商品で騙されることはないと思います。

 

これは余談ですが、金融機関で働いていたとき、インターンや新卒で配属された人にμとσの感覚を磨くように伝えていました。

 

さて、この分布からもう少しわかることがあります。ショートフォール確率とVaR(95%)です。

 

ショートフォール確率とは、元本割れリスク(各分布の期待リターン100%点から左側の面積)です。

 

VaRとは、予想最大損失額(95%)です。カッコ内の95%の意味は、95%の確率で収まる予想最大損失額です。よって、95%超の確率(96〜100%の間)でそれを超える損失が発生する可能性があるということです。

 

 

ショートフォール確率は、μとσが上昇するとピークが右に移動するので下がりますが、VaR(95%)は、裾野が広がることにより上昇しています(グラフ上はマイナスが増えている)。

 

期待リターン(μ)と標準偏差(σ)から、対数正規分布に従う前提とはなりますが、これだけのことがわかります。

 

対数正規分布だけでは限界があるのでモンテカルロ・シミュレーション

ここまで、対数正規分布によるシミュレーション分析で、リスク・リターンを確認しました。

 

対数正規分布によるリスク・リターンは解析的に解ける手法です。言ってみれば、ある数式にブチ込んで結果を確認しているだけです。

 

対数正規分布によるリスク・リターンを確認するデメリットは、基本的には将来1年間のシミュレーション分析でしかないことです(基本的にというのは、ルートT倍法などにより将来複数年をシミュレーション分析することも可能ではあります)。

 

勘違いしてほしくないのは、対数正規分布によるリスク・リターンがまったく意味がないわけではないですし、価値ある数値です。

 

さて、ここでモンテカルロ・シミュレーション(乱数シミュレーション)と言われる手法を考えてみます。

 

乱数を使うというだけで、グッとハードルが上がる気がしますが、今はアセットマネジメント会社で無償提供しているモンテカルロ・シミュレーション機能もあるので、利用するのもひとつの方法です(後ほど、紹介します)。

 

モンテカルロ・シミュレーションですが、理屈は簡単で対数正規分布に従うシナリオを乱数で生成して、各シナリオに沿ったリスク・リターンを計算して分析します。

 

言葉で説明するよりも、実際に分析をしてみます。

 

まずは、対数正規分布に従うシナリオを生成します(将来10年)。前提は、期待リターン(μ):5%、標準偏差(σ):10%とした仮の金融商品です。

 

 

初期投資額100としたときの、将来10年の価格推移シナリオ50本です。

 

10年後にはほとんどのシナリオでプラスリターンとなりますね。ほとんどのシナリオというのがポイントで、すべてではないです。なぜなら、リスクがあるからですね。

 

ここでもう一つ、期待リターンを複利利回りで計算する結果を下回るシナリオが確率的に発生するということです。

 

要するに、100×(1+5%)10= 約163を下回るシナリオが当然なながら存在するので、期待リターンだけでリスクに触れない表現は誤解を生む可能性があります。

 

一方で、期待リターンを上回る可能性もあるので、リスクとリターンの両併記による投資判断が公正だと考えます。

 

次に、シナリオを3,000本に増やして積立投資(月:10万円)として、シミュレーション分析してみます(期待リターンとリスクを月次変換して計算しています)。

 

 

3,000本のシナリオ結果についての各項目の定義です。

 

元本:毎月10万円積立たときの金額

下位5%:各年のリターンを並べて下から数えて150番目(3,000本×5%)のシナリオ結果

平均値:各年の全てのシナリオの平均リターン

中央値:厳密には違いますが、各年のリターンを並べて1,500番目のリターン

元本割れリスク:各年でシナリオ中で元本を割ったシナリオ数の割合

 

モンテカルロ・シミュレーションによるリスク・リターンをまとめます。

 

  • 元本と元本割れリスクは、1年目は(グラフに表記していませんが)30.7%、経過年毎にリスクは低下して、10年目には7%程度になる
  • 下位5%のシナリオでは、1年目は元本の約90%、経過年毎に改善され10年目には約96%になる
  • 平均値と中央値の乖離は大きくなく、10年目で1,600万円近くとなる

 

ここで、先ほどの対数正規分布からのリスク・リターンと比較してみます(μ:5%、σ:10%の場合)。

 

投資後1年目 平均値 中央値 下位5%点 元本割れリスク
対数正規分布 1,267,849 1,261,525 1,070,190 30.9%
乱数シミュレーション 1,236,098 1,235,505 1,068,956 30.7%

 

対数正規分布は、積立投資ではないことが数値結果に影響していると思われますが、同じ方向であることがわかります。

 

今回のモンテカルロ・シミュレーションは、エクセルモデルを自作しましたが、アセットマネジメント会社で無償提供されていますので、2社ほど紹介します(2社との利益関係はないので、利用されても僕には金銭は一切入ってきませんのでご安心ください(笑))。

 

  • 明治安田アセットマネジメント
    • 初期投資額、リターン、リスク、毎月積立額、投資期間を設定すると、モンテカルロ・シミュレーションでの結果を返してくれます。上位〇〇%点、下位〇〇%点、元本割れリスクもわかります。また、計算方法もあるので、自分でもモデルを再現することが可能です。シナリオ数は、1,000本。

 

  • 野村アセットマネジメント
    • 初期投資額、リターン、リスク、毎月積立額、投資期間を設定すると、モンテカルロ・シミュレーションでの結果を返してくれます。サンプル数による分布も表記してくれるので、全体感を把握することができます。シナリオ数は、10,000本。

 

エクセルのモンテカルロ・シミュレーション結果を2社と比較しましたが、お互いに数値は完全に合致はしませんが、方向は同じであり乖離幅も大きくありませんでした(当然、明治安田と野村でも数値は完全に合致しない)。

 

原因は、複合的要因(乱数の精度、シナリオ数、積立投資のタイミング(期初・期中・期末)、モデルの違い等々)になると思われます。

 

ただ、エクセルモデルと結果が大きく乖離しないことがわかったので、今後は2社のモデルを利用させてもらうことにします。

 

仕組みさえ理解していれば自作モデルに拘るのではなく、効率性を考えて公開モデルを利用することをオススメします。

 

シミュレーションはそれ以上でもそれ以下でもない

対数正規分布とモンテカルロ・シミュレーションからのリスク・リターンを確認しました。

 

人によっては、シミュレーションが有効な投資判断になると思われたかもしれませんが、注意点もあります。

 

  • シミュレーションをする際の変数(期待リターンや標準偏差等々)は過去データや自身の予測値などの前提に影響を受けることが多い

 

  • 選択するモデル(乱数の精度を含め)によりシミュレーション結果は変わる。また、将来を確実に当てるモデルなどは存在しなく、メリットやデメリットがある

 

  • シミュレーションのモデル構築にチャレンジするなら試行錯誤が必要で、何かしらの妥当性チェックをするとよい(数値チェックではなく方向感を確認しないと、とんでもない勘違いをしてしまう可能性がある)

 

シミュレーションに慣れてくると、結果の数値に引っ張られそうになりますが、シミュレーションはある前提におけるひとつの指標であり、すべてではないことを忘れないようにします。

 

シミュレーション分析の解釈に価値がある

シミュレーションによる数値結果は投資判断のひとつになりますが、それは数値結果ではなくその数値からどのような解釈をするかです。

 

  • 対数正規分布やモンテカルロ・シミュレーションをする目的から考えられる解釈
  • シミュレーションの前提(変数の定義等)を踏まえた解釈
  • 長期のシミュレーションであればあるほど数値よりも方向性について解釈

 

将来を確実に当てるシミュレーション結果はありませんが、

 

  • 期待リターンで〇〇年複利運用すれば△△万円になるだけではなくリスクまで把握できる
  • リスク・リターン(特にリスク許容度)を定量的に捉える手段のひとつとしては悪くない
  • リスク・リターンの適切なコントロールに使える。また、リスクだけを叫ぶ人やリターンだけを叫ぶ人よりはまともな思考になる

とは思われます。

 

最後にもう一度だけ、シミュレーションが目的になるのではなく、シミュレーション分析の解釈に時間を注いで投資判断するのが賢明だと考えます。

 

注意)シミュレーションを含めた計算結果は将来のリスク・リターンを保証するものではありませんし、計算ロジックの正確性も担保していませんのでご留意ください。尚、投資や資産運用の最終判断は自己責任でお願いいたしますします。