海外ETFを活用したパッシブ運用で全世界へ投資しようと考えた場合、『iシェアーズ MSCI ACWI ETF(ACWI)』もしくは、『バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)(VT)』が候補に挙がると思います。

 

iシェアーズ MSCI ACWI ETF(以下、ACWI)全世界株式市場の時価総額約85%をカバー。バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(以下、VT)全世界の株式市場時価総額約98%をカバー。

 

どちらのファンドも運用方針が非常に似ているので、価格推移(下記)も同じような動きをしています。上段がACWI、下段がVT。

 

出典:モーニングスター株式会社

これは、過去10年に遡っても同様の傾向になりますが、当然と言えば当然です。両ファンドは世界の株式市場と連動しているからです。

 

では、ACWIやVTなどの世界の株式市場へ投資するパッシブ運用はリスク・リターンではどのくらい効率的な運用ができると考えられるのでしょうか?

 

まず、リスク・リターンを考えるには統計的な処理をする必要があります。一般的に、金融業界では分布が扱いやすいこともあり、対数正規分布に従う前提が多いです。

 

ただし、実際のリスク・リターンは長期(期間が10年超くらい)になると、ファットテールという分布の裾が厚くなります。原因は、ラックマンデー、ITバブル、リーマンショック、東日本大震災等々の発生頻度は少ないが発生した場合の影響が大きなイベントが現実には起こるからです。

 

もちろん、分布を仮定しない統計手法もありますが、通常であれば対数正規分布に従うことを前提にして問題ないです。

 

さっそく、ACWIとVTの直近データ(3年、5年、10年)から確率密度関数と累積分布関数を計算してみます。

 

3年 5年 10年
リターン(ACWI) 10.97% 6.74% 12.12%
リターン(VT) 10.92% 6.65% 12.27%
標準偏差(ACWI) 10.00% 11.06% 14.00%
標準偏差(VT) 10.12% 10.99% 14.14%

確率密度関数は、縦軸が確率(対数表示)、横軸がリターン(100%が投資元本)となります。

 

累積分布関数は、確率密度関数を積分した結果ですが、簡単に言うと、横軸の100%点がリターンゼロ(投資元本のまま)までの累積確率と理解すればよいです。

 

これまた、ACWIとVTは似通っているので、分析結果は両ファンドに共通します。

 

まず、確率密度関数を見ると、直近10年の分布の裾野が広がっているのがわかります。長期運用はリスクが低くなるとの説もありますが、実際にはリスクは大きくなっています(リターンのブレが大きくなっている)。

 

この結果から投資元本毀損リスクだけを見ると、

 

3年 5年 10年
プラスリターン 約86% 約73% 約81%
マイナスリターン 約14% 約27% 約19%
シャープレシオ 0.95 0.57 0.86

 

となることがわかります。

 

いきなりシャープレシオを載せましたが、シャープレシオとはリスク(標準偏差)を考慮したリターンです。計算式としては、ファンドのリターンから無リスク資産のリターンを控除した数値を分子、ファンドの標準偏差を分母にします。

 

よって、無リスク資産を超過したファンドのリターンが大きく、標準偏差(リターンのバラツキ)が小さければ、シャープレシオは大きくなり、リスクに対して効率的な運用をしていると言えます。

 

一般的な目安としては、0.5〜1.0未満が普通、1.0〜2.0未満が優秀、2.0超が超優秀なファンドですので、ACWIとVTは普通レベルになります。

 

定量分析からは、突出した経済不合理性をもつ非効率なファンドとはいえないことがわかります。

 

ここからは個人的見解ですが、米国を中心とした世界の株式市場は景気後退期がありながらも右肩下がりで何十年も続くとは到底思えません。むしろ、資本主義社会の中では強欲な強者たちが経済を持ち上げ続ける可能性が高いと思います。

 

そう考えると、ドル円の為替リスクはあるにしても、70%以上の確率でプラスリターンになる世界の株式市場への投資は、日本の個人投資家が効率的な資産運用を目指す上で検討する余地は十分にあると考えられます。

 

最後に、ETFの保有コスト(経費率)ですが、ACWI:0.34%、VT:0.09%になります。コストはリターンに影響しますので重要ですが、VTの低コストは投資家にはありがたい水準です。

 

尚、定量分析におけるリスク・リターンは、あくまでも過去の実績であり未来が確約されているわけではないので注意が必要です。また、資産運用における意思決定にはさまざな視点が考えられますので、リスク・リターンとコストだけで決定するのが絶対的な正解とはいえません。

 

注意)シミュレーションを含めた計算結果は将来のリスク・リターンを保証するものではありませんし、計算ロジックの正確性も担保していませんのでご留意ください。尚、投資や資産運用の最終判断は自己責任でお願いいたしますします。