個人投資家はフロント部門とミドル部門の思考を持つ必要がある

機関投資家には、フロント部門とミドル部門とバック部門があります。

フロント部門は、資産種類を決めて実際に投資を担う部門で、株式や債券などの有価証券への投資であれば、銘柄選択と投資額を決めて実際に投資をします。

ミドル部門は、運用戦略、運用計画、運用評価、リスク管理を担う部門で、フロント部門の年間投資額や期待利回り、運用成績評価、リスク・リターンの合理性をモニタリングします。

フロント部門とミドル部門は牽制し合う関係ですね。

バック部門は、証券会社との事務処理や財務会計処理などの法定会計を担う部門です。

個人投資家にバック部門はほぼ関係ないですが、リスク・リターンについてはフロント部門とミドル部門の思考は必要になります。

たとえば、期待リターン:8%、リスク:3%の投資案件があったとします。

期待リターンは、その投資によって得られるであろう利回りであり、リスクはその乖離幅をいいます。詳細は、『リスク・リターンの関係と分析結果の意味するところは?』を参照ください。

フロント部門の思考では、仮に予算(≒必達目標)のリターンが6%であれば、期待リターンが8%の投資案件は、リスク(3%)については深く考えず、感覚的に捉えて投資を実行する方向で進むでしょう。なぜならフロント部門は利益を稼ぐことが求められるのであり、予算を達成が全てだからです。

ミドル部門(リスク管理)の思考では、リスクの3%に注目します。リスクの3%を定量的な側面と定性的な側面から分析するのです。なぜなら、ミドル部門は潜在リスクなるべく削減し、かつ顕在化させないことが全てだからです。

最近は、数学的な素養を持つ人材も多く、高等数学を駆使して数値分析が盛んに行われています。盛んに行われすぎているために、過去にサブプライムローンで火を吹きましたが、特定の強い前提上に成り立つモデルのリスクが高まっているともいえます。

では、この場合の意思決定はどうなるのでしょうか?

原則的には、機関投資家には許容リスクが決まっており、その範囲内で収まるのであればフロント部門の投資は実行することができますが、ミドル部門は高知能集団なので、面倒な難癖を付けて説明を求めてきます。

機関投資家の組織体系により、フロント部門とミドル部門の関係性は異なりますし、実際は期待リターンとリスクだけではない部分(担当役員の好きな資産は投資可能性が高いなど)がほとんどですが、リスク・リターンを異なる視点で思考することも必要となります。

個人投資家には、このような制度的に牽制し合う部門などありえないので、自己で行わなければいけません。リスクとリターンは表裏一体となりますので、どちらも同じレベルで判断する思考を養う必要があります。

かと言って、思考のし過ぎで行動できないのも問題ですが、この思考は経験数を増やすことで克服できます。