キャッシュ・マネジメントにおける基本知識とは何か?(例題付き)

キャッシュ・マネジメント(現金や預金の管理)においては、キャッシュサイクルを短縮することが重視されます。流動性の観点からも、資本コストの削減の観点からも、キャッシュサイクルの短縮化は望ましいことになります。

キャッシュサイクルは、キャッシュ・マネジメントにおいては、

  • 現金の回収を早める方法
  • 現金の支払いを送られせる方法

の2つが重要になります。


基本的な前提知識の確認

  • 小切手などが発行されてから(または受け取ってから)、実際に決済されるまでの期間を、未決済期間(資金化期間)と呼びます。これは、企業内部での事務処理や銀行内部の事務処理、銀行間のやりとりに時間がかかるからです。なお、現金回収の局面での未決済期間を回収期間、現金支払いの局面での未決済期間を支払期間と呼びます。

 

  • 企業が銀行から借入をしたり、サービスの提供を受けるにあたって、銀行に手数料を支払うか、もしくは一定額の預金をすることを求められることがあります。この場合の預金額(契約により預金しておくことが求められる額)を、補償残高といいます。

 

  • キャッシュの受け取りを早めるべきかどうかや現金の支払いを遅らせるかどうかを検討する際には、便益と費用を比べて、便益の方が大きい選択肢を採用すべきだといえます。たとえば、キャッシュの受け取りを早めることによる便益(利息の受け取りなど)とそれに要する費用(銀行に支払う手数料など)を比較して、実際にキャッシュの受け取りを早めるべきかどうかを決めることになります。

年間の便益または費用はいくらになるのか?

ある企業の毎日の現金受取額1,000万円で、回収期間は2日である。ある銀行が、月額5万円の手数料で回収期間を削減する(0日にする)サービスを提案してきました。資金の運用利回りが年6%であるとすると、このサービスを利用することによる年間の便益または費用はいくらになるでしょうか?

回収期間2日で、日々の受取額が1,000万円であったとすると、銀行からの申し出を受け入れれば、キャッシュ残高は2,000万円(=1,000万円×2日)だけ増加することになります。そして、年利が6%であれば、キャッシュ残高の増加により、年間で120万円(=2,000万円×6%)だけ金利収益を得ることができます(これが便益に該当します)。

他方で、銀行に支払うことになる手数料は、月額5万円なので、年間では60万円(=5万円×12ヶ月)となります(これが費用に該当します)。

以上より、銀行からの申し出を受け入れることによる年間の正味便益は、60万円(=120万円−60万円)です。

よって、この場合は、他に要因がなければ銀行からの申し入れを受ける意思決定をすることが合理的となります。

最後にキャッシュを保有する目的を再確認

経済学において、企業(又は個人)がキャッシュを保有しようとするのは、次のような理由によるとされています。これは、学術的な分類になりますが、ほとんどの場合、いずれかに当てはまります。

  1. 支払手段
    • 通常の取引の決済に用いるために保有しています。
  2. 予防手段
    • 予期せぬ自体が生じた場合に対処するために保有します。通常は、キャッシュとして保有する以外に、安全性の高い短期の債券(MMFや国債など)に投資することで対処します。
  3. 投機チャンス
    • 予期せぬ事態の中でも、投機的な投資の機会が生じた場合に対処するために保有します。通常は、キャッシュとして保有する以外に、安全性の高い短期の債券(MMFや国債など)に投資することで対処します。