資本コスト意義と推計方法とは?加重平均平均資本コストの注意点とは?

資本コストとは、資本の機会コストです。ある投資案に資本を充てれば、他の投資案にその資本を用いることはできないので、資本を他の投資案に用いれば得られたはずの利益を、ある投資案を採用するためのコストとして捉えます。

このとき、投資案のリスクに応じて必要となるリターン(利益)も異なるので、資本コストは次のように定義できます。

資本コスト:その投資案と同程度のリスクを有する他の投資案に資本を用いたならば、得られたはずの利益。

このような意味を持つ資本コストは、投資案の必要最低利回りとしての意味を持つことになります。ある投資案に資本を用いることが有利であると言えるには、その投資案と同等のリスクを有する他の投資案に資本を用いたならば得られるであろう利益を超える利益を稼ぎ出す必要があるからです。

そして投資案のNPV(Net Present Value)がプラスであるということは、初期投資額だけでなく、そうした機会コストを回収してなおプラスの利益が生じることを意味します。

資本コストは、その投資案のリスクを踏まえて推計する必要があり、具体的には、リスクフリーレート(国債金利)に投資案のリスクに応じて異なるリスク・プレミアムを上乗せした値として決定します。

しかし、投資案のリスク水準を踏まえて資本コストを推計するとは言っても、通常、それを行うのは容易ではありません。検討している投資案のリスク自体を見積もることが困難ですし、それと同等のリスクを有す他の投資案を探し出すこと、他の投資案のリスクを見積もることもまた困難です。

それでは、資本コストをどのように見積もれば良いのでしょうか。資本コスト推計の手がかりを得るために、投資家(債権者・株主)が、企業の発行する証券(社債・株式)に対する評価(社債の時価・株価)を利用します。

債権者は、社債保有に伴って得られるキャッシュ・フロー(以下、CF)をもとに社債の価値を評価します。ただしCF(利息や元本償還額)は、社債発行時に決定されていますし、通常の企業であればデフォルトリスクが実現する可能性は低いため、CF(利息や元本償還額)が変動するリスクはあまりありません。

他方、株主は株式保有に伴って得られるCF(配当等)をもとに株式の価値を評価します。CF(配当等)は、企業の行う投資によって変わります。投資が上手くいけば営業キャッシュ・フロー(以下、OCF)は増えますし、上手くいかなければOCFは減ります。

つまり株主は、企業がどれくらいのOCFを稼ぎ出すことができるか、そのOCFはどの程度の変動リスクがあるかを見積もり、そこから債権者に分配される利息等を控除して、自分がどれくらいCF(配当等)を手にすることができそうかを予想し、それをもとに株式の価値を評価します。こうしたCF(配当等)に対する評価結果が、株式市場における株価なのです。

このように社債の時価や株価(特に株価)は、企業の投資に対する評価を示していると考えられるため、時価から推計した社債債権者や株主の要求利回りは、企業の投資が有するリスクを織り込んでいると考えることができます。

したがって、加重平均資本コスト(WACC:Weighted Average Costs of Capital)を計算すれば、それが債権者と株主から調達している資金に関する、リスクを踏まえた資本コストの推計値となります。

投資案の評価(例えば、NPV method)にWACCを用いる場合、次の2点に注意する必要があります。

WACCは、債権者や株主が投資のリスクを踏まえて行った証券の評価結果に基づいて算定していますが、彼らが評価しているのは、すでに行われている投資のリスク(厳密にいえば、既に行われている様々な投資のリスクの平均値)についてです。

よって、企業がこれから行おうとする投資案のリスクがWACC算定の基礎になっている投資のリスク(または平均的なリスク)と異なる場合には、WACCをそのまま用いることは不適切となるので、WACCを調整する必要があります。

また、WACCは現在の資本構成を前提に算定されていることにも注意が必要です。例えば、投資案を実行するために新たに社債を発行して資金を調達する場合、負債の利用度が上昇することで株主が負担する財務リスクが上昇し、株主の要求利回りが上昇する可能性があります。

そうすると、社債を発行する前後で、株主の要求利回りが変化するとともに、WACC算定のベースとなる負債と株主資本の調達割合も変わることになります。

以上のことから、現在のWACCを新たな投資案の必要最低利回りとしてそのまま用いることができるのは、次の2つの条件を満たす場合に限定されます。

  • 投資案のリスクは、企業がすでに行っている投資のリスク(平均的なリスク)と同水準である。
  • 投資案の実行に伴う資金調達によって、資本構成は変化しない。