投資評価はROI(投資利益率)、業績評価はRI(残余利益)でするべし

ROI(Return on investment:投資利益率)とRI(Residual income:残余利益)では、利用目的が異なるため、投資評価と業績評価では別々に利用しなけばいけません。

投資評価では、投資から獲得した利益だけではなく、利益を獲得するために行った投資額も考慮に入れる必要があります。

ROIは、利益と投資を同時に考慮する評価軸として知られています。ROIは次式によって計算されます。

ROI = 投資利益/投資額

これは、非常に明快な式で、投資額に対して投資利益がどれだけあったかを示すことになりますので、投資評価としては合理的となります。

しかし、ROIを事業部門(さまざまな投資プロジェクト行っている部門)の業績評価として用いることは適切ではありません。なぜなら、ROIは個別の投資評価を事業部全体の望ましい意思決定と一致させないからです

例えば、A株式会社が事業部制(事業部毎に評価される)を採用しているとします。甲事業部の期中での投資業績は次のとおりだったとします。

投資利益:150億円

期初投資額:1000億円

ここで、新投資プロジェクトが持ち上がってきたとします。プロジェクトの内容は次のとおりです。

見込み投資利益:30億円

初期投資額:300億円

この時に、甲事業部は新規プロジェクトを採用するべきかどうか検討します。なお、甲事業部における資本コスト(必要最低利回り)は、8%とする。

まず、新投資プロジェクトのROIは10%(30億円/300億円)と計算されます。この新投資プロジェクトのROIは資本コストである8%を上回るので、甲事業部門としては採用するべきといえます。

では、甲事業部の投資業績もROIで期末に評価するとした場合、甲事業部長はこの新投資プロジェクトを採用するでしょうか。

甲事業部の期中時点のROIは15%(150億円/1000億円)と計算されます。また、新投資プロジェクトを採用した場合、この甲事業部のROIは約13.85%((150億円+30億円)/(1000億円+300億円))と計算されます。

したがって、甲事業部がROIにより期末に評価されるならば、甲事業部長は新投資プロジェクトを採用しないのが合理的な判断となります

新投資プロジェクトのROIは資本コストを上回るのに、事業部の評価もROIにすると採用しないのが合理的な判断になるという不可解なことが生じます。

ここで、このROIの問題点を克服するために考案されたのがRI(Residual income)です。RIは次式によって計算されます。

RI=投資利益−資本コスト×投資額

RIを甲事業部の投資業績指標として使用すれば、甲事業部長の意思決定も望ましい意思決定と一致させることができます。

期中の甲事業部のRIは、

RI=150億円−8%×1000億円=70億円

と計算されます。

また、新投資プロジェクトを採用した場合のRIは、

RI=(150億円+30億円)−8%×(1000億円+300億円)=76億円

と計算されます。したがって、甲事業部の期末評価がRIで評価されるならば、新投資プロジェクトの採用によってRIでが増加するため、甲事業部長も新投資プロジェクトを採用すると考えられます

もちろん、この意思決定は甲事業部としても望ましい決定となります。

一般的な知名度はROIが高いですが、個別の投資プロジェクトを評価する場合は有効な手法となりますが、事業部などのさまざまな投資プロジェクトの集まりを全体評価する場合は、RIを使用することが望ましくなります。