会社員の悩みのひとつに上司との相性があります。

上司が仕事のできない性格も悪い人であっても、部下は付き合わなくてはいけません。ほとんどの人は自分の上司運が悪かったと嘆き、愚痴を吐きます。

そして、自分と同じように考えている仲間を募り、上司との対立関係を構築することになります。

こうなると、上司が嫌だから仕事も嫌になり、会社も嫌になり、チームとしては負のスパイラルに陥ることになります。

ある外資系金融機関で働いていた時のことです。

チームは5人でチームのヘッドは日系の大手金融機関から転職してきた30代後半の海外駐在もある理論派A、チーム内にもう一人、外資系金融機関から転職してきた2歳年下の実務派Bがいました。

担当役員の意図は明確で、チームヘッドのAに対するBの闘争心に火をつけることでした。

この外資系金融機関では、決定(命令)のプロセス中はタイトルに関係なく議論を公正に公平にできる環境でしたが、最終決定権はチームヘッドにあり、一度、決定(命令)が下れば絶対となるルールでした。その理由は、誰に責任があるかはっきりしているからです。

AとBは相性が悪く、運用方針などでもぶつかることが多々あり、お互いにストレスを抱えていましたが、Aは意思決定権がある分、Bの方が明らかにストレスは大きかったと思います。

当然、チーム内の雰囲気は日増しに悪くなっていきました。そろそろ限界が近づいてきたなと思った時に、Bが突然、今までとは異なる行動を取り始めました。それが、Aの意思決定プロセスに賛同し始めたのです。

普通であれば、Bも優秀なトレーダーなので、Aを出し抜くもしくは足を引っ張る行動に出ると思ったのですが、チームヘッドであるAの意図を汲み取り先回りしてどんどん実行していったのです。

この変化には、チーム内の他の3人も驚きました。ただ、向かうべき旗がスムーズに決まりだすと、チーム全体の運用成果も向上し、その年のボーナスバジェットは高額でした。

その後、Bが変化した意図が判明するのです。

チームヘッドであったAは、成果を評価され新組織設立とその担当役員に昇格して、我々のチームのレポートラインから外れることになり、Bも同時に昇格してチームヘッドになったのです。

つまりは、Bはこの状況になるように行動を変えたのです。相性の悪い上司を蹴落とすことに力を注ぐのではなく、自分も昇格というリターンを得ながら上司も飛ばす戦略を実行したのです。

これは、大前提としてAもBも優秀かつチーム自体も実力が備わっていたから実現したのですが、僕自身は意表を突かれた感じでした。

上司の愚痴や文句を言ったり、足を引っ張るよりもよっぽど意味のある行動だと思います。

僕の経験は特殊だと思われるかもしれませんが、イマイチな上司が急に自分の上に配属されたら前部署でこのようなことが行われていた可能性があるかもしれません。