有価証券(株式や債券など)の会計評価とリスクとリターンの基礎

有価証券(株式や債券など)の会計評価とリスクとリターンの基礎についてです。

有価証券の会計評価を気にする機会は少ないと思いますが、財務分析などをする人は、すでに知っている内容もありますが復習程度に読むとよいかも知れません。

リスクとリターンについては、資産運用を初めたばかりの人には重要ですので必ず理解しましょう。


公正価値基準

購入から売却まで、『数日から数週間の期間しかない有価証券』と『長期で保有する有価証券』では、同じような手法で評価するのは適切ではありません。

そのため、有価証券を3つに分類することで対応します。3つの分類は、『売買目的有価証券、満期保有目的有価証券、その他有価証券』となります。生命保険業では、もう一つ、『責任準備金対応債券』がありますが、これは業界特有の分類なのでここでは触れません。

  • 売買目的有価証券およびその他有価証券は、報告日(決算日)ごとに公正価値で再測定されます。
    • 未実現評価損益は、売買目的有価証券は当期純利益に計上され、その他有価証券は純資産に直入されます(その他有価証券については、部分純資産直入法もあります)。
  • 満期保有目的有価証券は、取得原価と額面額の差額を金利要因とすることで満期日までに均等償却を控除した金額で表示される(公正価値は適用しない)。

有価証券を保有する会社は3つの分類のいずれかを選択して有価証券を評価します。

分類は、有価証券ごとに行う必要があります。また、基本的に分類は一度しかできませんので、一旦選択した分類は、有価証券が償還もしくは売却されるまで継続して同じ評価方法となります。

資産の公正価値が取得原価よりも高い場合、公正価値の評価区分を選択することは有益となりますが、公正価値は一般的には市場価値になるので、将来的にその有価証券の価格が上がるか下がるか誰にもわかりません。

また、全ての有価証券を公正価値(≒市場価値)で評価することが正しいと唱えている人もいます。これは、時価会計の精神を強く推し進める人たちです。

財務諸表分析に与える公正価値の影響

売買目的有価証券およびその他有価証券は、貸借対照表(B/S)へ公正価値で計上されますが、多くの会社は取得原価も開示しております。

取得原価の情報を調べることで、財務諸表分析を補完することもできます。

  • 証券市場が上昇した場合、公正価値に基づくほうが取得原価よりも流動性比率を適正に示すことになります。適正に評価され流動性比率は、会社の信用度を上げることができます。
  • 証券市場が下落した場合、公正価値に基づくほうが取得原価よりも流動性比率を適正に示すことになります。

流動性比率の低下が著しい場合、会社は予想よりも早く債務を支払う可能性があります。同時に、証券市場での自社株の下落は、資金調達を難しくし、会社の状況を継続的に悪化させることになる可能性があります。

このような流動性の危機は、会社を「死のスパイラル」に貶めることがありますので、個人投資家であっても投資先会社の財務モニタリングが必要です。

基本的な2つの投資リスク

システマティック・リスク(Systematic risk)

システマティックリスクは、市場リスクとも呼ばれ、すべての会社が直面するリスクです。 景気循環などの経済全体の変化が、すべての市場参加者に影響を与えます。

よって、システマティックリスクは回避不能なリスクとも呼ばれます。すべての有価証券が抱えるリスクなので、このリスクは分散ポートフォリオでも相殺することはできません。

アンシステマティック・リスク(Unsystematic risk)

アンシステマティック・リスクは、会社リスクとも呼ばれ、個別の有価証券に内在するリスクです。 このリスクは、発行体の業界、製品、顧客ロイヤリティ、財務レバレッジの度合い、経営管理能力などによって決まります。

よって、アンシステマティック・リスクは個別の有価証券に内在するリスクのため、分散リスクとも呼ばれます。個別の有価証券が抱えるリスクのため、このリスクは分散ポートフォリオを構築することで相殺することができます。

その他の投資リスク

信用リスク(Credit risk)

信用リスクとは、債務証券の発行体が債務不履行に陥るリスクです。このリスクは、格付機関からの格付によって確認することができます。

外国為替リスク(Foreign exchange risk)

外国為替リスクとは、為替変動による影響を受けるリスクです。

金利リスク(Interest rate risk)

金利リスクとは、金利の変動により投資有価証券の価値が変動するリスクです。一般的に、満期(償還)までの期間が長いほど、金利リスクは大きくなります。

事業リスク(Industry risk)

事業リスクとは、特定の業界の会社が発行する有価証券に影響を与えるリスクです。たとえば、燃料価格の急騰は航空業界に悪影響を与えます。

政治リスク(Political risk)

政治リスクとは、税法や環境規制の変更など、投資先が海外となり、現地の政府の政治行動から損失を受けるリスクのことです。

流動性リスク(Liquidity risk)

流動性リスクとは、有価証券を売却したい時に短期間で売却できないリスクです。

財務リスク(Financial risk)

財務リスクとは、金利変化や投資家からの要求利回りが変化するなど、金融市場の変化に基づいて損失が生じるリスクです。

リターン

リターンとは、投資家がリスクを取って投資することの見返りとして受け取る金額です。

投資収益 = 受け取った金額 – 投資額

例えば、投資家が100億円の投資額に対して、112億円の受取をした場合の投資収益は、112億円 − 100億円 = 12億円になります。

また、投資収益率とは、投資額に対する投資収益をパーセンテージ換算した数字です。

投資収益率 = 投資収益/投資額

上記の例では、12億円 ÷ 100億円 = 12%になります。

リスクとリターンの関係

投資家への投資を誘引するには、期待リターンがリスクに対して十分であるか、および投資家のリスクに対する選好によって3つに分けられます。

  1. 投資家の大多数は、リスク回避型です。同じ期待リターンであれば、リスクの小さい有価証券を選びます。言い換えれば、リスクのある有価証券は期待リターンが高くなければ投資しないということです。
  2. リスク中立型では、投資家は、同じ期待リターンであればリスクは同じと考えます。 したがって、リスク中立型の投資家は、合理的なリスクに対する考え方を持っています。
  3. リスク選好型では、リスクに対して楽観的な態度をとる。リスク・リターンに対して積極的に投資をする投資家となります。

伝統的な金融商品

投資家や企業はさまざまな金融商品の中から選択し、投資や資金調達を行うことができます。

広く利用可能な伝統的な金融商品で、低い収益率から高い収益率のリストは以下となります。極私的な意見です。

  1. 国債
  2. 社債
  3. 優先株式
  4. 普通株式

これらの有価証券は、その有価証券の裏付資産によってリスクが変わります。例えば、有担保証券は無担保証券よりもリスクは低くなりますが、利回りも低いです。また、無担保証券はリスクが高くなりますが、利回りも高くなります。

尚、債券は資産によって担保されているが、普通株式は完全に無担保である。 したがって、普通株式は債券よりも高い収益率を得ることが期待されている。